貴方の見ているドメインは
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その次にふり向いたとき、果はたせるかな、殆ど目の前の対岸から、はつきりと彼の方を向き、ためらひながら何か云ひたげにしているやうな相手の顔を見た。それは徳次の幼友達であり、彼の兄貴株でもあれば大将株でもあつた、そして今は彼なんかには傍へもよりつけないやうに感じられるあの「医師高間房一氏」であつた。
「ふうむ」
「一体どうしたというのだ。」
「ねえ」
この時さう云ひながら座に入つて来た者があつた。それは今泉だつた。
「やあ、おいでなさい。わたし、相沢です」
声をひそめて、富田が訊いた。
このポインタアの雑種は、房一の往診にはどこへでもついて来た。いゝ路づれだつた。
「わたし、あれらしいのよ」
ふいに冷気が盛子の咽喉もとから胸の中へしみこんだ。その時、夢の中でよくつかめないながらも何か急に閃ひらめき過ぎる考へのやうに、これが結婚といふものか、これが仕合せといふものか、といふ思ひがどこからともなくやつて来た。しかもそれは考へた瞬間にさつと身をひるがへして去り、だが印象だけは強くのこる、あの微妙な閃きだつた。
「さあ、殺せ。――うむ、え、さあ。――え、え」
盛子は急に思ひ出して不服さうな声を出した。だが、それは房一に向つて甘えながら不服を云つているやうな調子を含んでいた。
「もう遅いんですよ、おぢいさん。泊つてつたらどうです」